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2020.12.24

はり灸と糖尿病~論文のデータから考察する改善の可能性~

はり灸と糖尿病を表象する医療機器など
日本の「国民病」といったら、皆さんはなんだと思いますか?
人によっては「がん」や「うつ」だと思うかもしれませんね。
どちらも日本だけで100万人以上の患者さんがいるので、たくさんの人が悩んでいるのは確かです。
でも実は、そのどちらよりも「糖尿病」の患者さんの方が多いんです。

厚生労働省が2016年に実施した「国民健康・栄養調査」という調査の結果によれば、「糖尿病が強く疑われる者」が約1000万人、「糖尿病の可能性を否定できない者(予備軍)」も1000万人にのぼるといいます。
日本の人口が1億2000万人なので、およそ6人に1人の割合で糖尿病の危険があるということです。
こんなにたくさんの人が糖尿病にかかっている、もしくは糖尿病かもしれないなんて、知っていましたか?

今回の記事では、糖尿病について、そしてはり灸がどう作用するか、研究論文なども引き合いに出しながら詳しくお伝えします。

目次




糖尿病について


糖尿病の文字を糖分で表現

日本の「国民病」といったら、皆さんはなんだと思いますか?
人によっては「がん」や「うつ」だと思うかもしれませんね。
どちらも日本だけで100万人以上の患者さんがいるので、たくさんの人が悩んでいるのは確かです。
でも実は、そのどちらよりも「糖尿病」の患者さんの方が多いんです。

厚生労働省が2016年に実施した「国民健康・栄養調査」という調査の結果によれば、「糖尿病が強く疑われる者」が約1000万人、「糖尿病の可能性を否定できない者(予備軍)」も1000万人にのぼるといいます。
日本の人口が1億2000万人なので、およそ6人に1人の割合で糖尿病の危険があるということです。
こんなにたくさんの人が糖尿病にかかっている、もしくは糖尿病かもしれないなんて、知っていましたか?

今回の記事では、糖尿病について、そしてはり灸がどう作用するか、研究論文なども引き合いに出しながら詳しくお伝えします。

はり灸が身体に作用するメカニズム


はり灸について模型を使用して表現

そういうわけでここからは、はり灸についてお話しします。
まず、はり灸施術は、糖尿病にどのような影響を及ぼすものなのでしょうか?
効果は期待できるのでしょうか?

そもそも、はり灸が身体に作用するのは、どのようなメカニズムによるものかご存じですか。
はり灸は元々、中国にルーツを持つ民間の身体ケア法でした。
東洋医学的に説明するならば、「全身に備わっている361箇所の経穴(いわゆるツボ)を刺激することで、経穴とつながっている身体各部の不調を和らげる」方法だといえます。

より科学的な視点から見るならば、「はりや灸によって皮膚を刺激することで筋肉や皮膚についたごく小さな傷を修復するために、細胞が活性化し、自然治癒力や免疫力が高まる」と説明できるかと思います。
はり灸施術の面白いところは、「肩がこっているから肩」「お腹が痛いからお腹」というように、不調がある部位そのものを刺激するわけではないということです。
はり灸施術では、ある部位の不調に対処するためには、「経絡」というルートでつながった別の部位に施術を行います。
有名なところでは「足の三里」というツボがありますね。
ここに施術をすると、お腹(胃)の働きが活発になります。
「本当にそうなの?」と不思議に思われる方も少なくないでしょう。でも、そうなるんです(笑)。
そこはかとなく身体の神秘性を感じますね。

論文で示された糖尿病と鍼治療の関係


はり灸と糖尿病の関係について書かれた論文

さて、はり灸が糖尿病にどんな影響をおよぼすかについては、2017年に研究論文が出されています。
その論文は、大阪大学大学院の田口敬太氏らによる「糖尿病性末梢神経障害による両下肢感覚異常に対する鍼治療の効果」というものです。
この論文の中では、「鍼治療は副作用も少なく,一定の効果が期待できる為,糖尿病性神経障害を有する患者の治療法の一つとして有用な手段となりうる」と述べられています。
実験は、糖尿病にかかっている期間が長い人や、薬を飲んでもあまり効果が出ていない人も含む19名の患者さんを対象に行われました。
また、この実験では通常の投薬治療に加えて、1週間に1回足のツボへのはり施術を7回行い、経過を観察しています。

糖尿病性末梢神経障害には症状を和らげるための医薬品もあります。
しかし薬を使ったからといって、必ずしも十分な効果が出るわけではなく、しびれなどの症状に悩まされ続けている人も多いそうです。
また、糖尿病性末梢神経障害の症状のひとつに、「こむら返り」があります。
こむら返りはしばしば強い痛みを伴うため、寝ている間に起こると、どうしても目を覚ますことが多くなるものです。そうやって夜中に何度もこむら返りが起こることで、ちゃんと眠れず睡眠障害につながる可能性もでてきます。
そうした中、田口氏らの論文では、糖尿病性末梢神経障害へのはり施術を繰り返しているうちに、こむら返りが少しずつ改善されていることに気づいたとの描写があります。
加えて、実験の結果によると、約68%の患者さんがしびれなどの感覚低下の自覚症状が和らいだとの報告も確認できます。
ただしこれはあくまで「自覚症状」です。
客観的な評価をするためのテストの結果では、約26%の改善にとどまっているのも念頭に置いた方がいいでしょう。
そうはいってもやはり、こむら返りについては明らかな改善が見られています。
実験期間中、2度目の診療時には患者さん全体で39回だったこむら返りの回数が、最後の診療時には13回まで減っているんです。

はり施術や服薬以外にも、ウォーキングやストレッチがこむら返りの治療に有効です。
ところが、糖尿病性末梢神経障害の患者さんは、そういった運動をしようにも脚のしびれや痛みが邪魔で十分な運動ができないことも少なくありません。
そこで、一役買うのがはり施術です。
しびれや痛みといった自覚症状が和らぐことで運動がしやすくなり、健康を維持しやすくなるという効果も期待できますね。

糖尿病対策で期待できるはり灸の可能性


はり灸を行う様子のイメージ

このような結果から、田口氏らは「鍼治療は下肢神経障害の自覚症状を軽快させ患者に運動療法を促せる一助になるのではないか」と考察しています。
今のところ、こむら返りの改善を目指したはり灸による施術は、欧米でも日本でも行われていないようです。
これからまだまだ研究を重ねて実証していく必要があるとは思いますが、はり施術が糖尿病の症状の一部に明るい結果をもたらす可能性がある、というだけでも大きな前進ですね。

また、糖尿病性末梢神経障害の治療に使われる医薬品のうち「芍薬甘草湯」には、副作用が報告されています。
長い間にわたって芍薬甘草湯を飲み続けていると、高血圧や浮腫のリスクが高まるようですね。
海外では「キニーネ」という薬が使われていますが、これは耳鳴り、頭痛、眠気、白血球減少、血小板減少など多くの副作用があるといわれています。

それに比べると、はり施術には副作用らしい副作用はほとんどありません。
薬では大きな効果が出なかった人でも、はり灸による施術なら一定の効果が出る可能性も考えられます。
現在受けている糖尿病の投薬治療に満足できていない患者さんは、はり灸の施術も併用してみると変化があらわれるかもしれませんね。

田村はり灸治療院 田村宏樹
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